シロアリの生態
シロアリとは?
シロアリは、柔らかい体をした小さな昆虫で、木、草、落ち葉、樹皮、腐葉土などを食べます。
私たちは、シロアリを「白いアリ」と呼びますが、シロアリとアリは全く違います。昆虫の先祖が、3億年ほど前にゴキブリとシロアリの共通の祖先が分岐し、1つのグループを作りました。
シロアリはアリではなく、ゴキブリの仲間なのです。
日本のシロアリ分布
日本では沖縄、南西諸島を中心に22種のシロアリが生息していますが、住宅に多い被害をもたらしているのは、在来種のヤマトシロアリと外来種のイエシロアリです。
また戦後、米国から持ち込まれたアメリカカンザイシロアリもほぼ定着し、都市部で局所的に深刻な被害をもたらしています。
ヤマトシロアリ
ヤマトシロアリは、日本固有種のシロアリで、北海道中央部から南の、ほぼ全国に生息しています。個体の大きさはイエシロアリやアメリカカンザイシロアリより小さく、体長は4~6mmほどです。枯れ木の根元などに巣をつくりますが、コロニーの大きさは数万頭です。エサ場を生息場所とするので、エサ場の環境が悪くなればすぐに巣ごと移動する点が、ヤマトシロアリの特徴です。
イエシロアリ
イエシロアリは、ヤマトシロアリより大きく、体長は5~7mmほどです。東日本でも、海岸線に沿って、房総半島まで北上していますが、被害は西日本が中心です。コロニーの大きさは数百万頭に達し、直径1mを超えるものもあります。この巨大な巣を拠点にして活動するので、餌場を放棄することがありません。地下での酸素不足を避けるため、砂地に巣をつくる傾向があります。口に水を含んで食餌場所まで運ぶ能力があり、コロニーも大きいので、家全体が破壊されることもあります。
アメリカカンザイシロアリ
アメリカカンザイシロアリは、イエシロアリより大きめで、体長は7~8mmほどです。繁殖力は地下シロアリより小さく、コロニーはゆっくり増大し、最終的に1,000頭程度までになります。元々日本には居なかった種なのですが、木材や家具の輸入によって運び込まれたようです。土の中に巣をつくるヤマトシロアリやイエシロアリと違って、加害した木の中に巣をつくり、蟻道や蟻土を作りません。被害は主に、屋根裏や1階の天井裏で多く見られます。
アリとシロアリの見分け方
日常の生活で見かけるシロアリは、羽アリだけです。アリはウエストがくびれていますが、シロアリはずん胴です。
シロアリの4枚の羽根は同じ大きさですが、アリでは前の翅は後ろの翅よりずっと大きくなります。シロアリの触角はまっすぐ伸びていますが、アリの触角はL字型です。10倍程度のルーペを使用すれば、簡単に見分けることができます。
シロアリ
羽アリ
シロアリの一生
シロアリは、アリやハチとならぶ代表的な社会性昆虫です。女王と王を中心とした階級社会を形成し、階級ごとに分担する仕事が決まっています。王と女王は交尾、産卵が仕事です。
羽アリの時、群飛で巡り合った雄雌のペアは、新しいコロニーを創設します。女王の産んだ卵から孵化した幼虫は、脱皮を繰り返しながら成長し、職アリ、兵アリに分かれます。
コロニーが成熟すると、幼虫の一部は、ニンフとなって生殖虫への道を辿ります。時期が達成するとニンフは羽アリとしてコロニーを去り、新しいコロニーをスタートします。
シロアリの食事
イエシロアリ、ヤマトシロアリの食餌はもっぱら枯れた木材です。シロアリの腸には原生動物と呼ばれる大きな単細胞の生物が共生しています。原生動物は白蟻の齧った木粒を体内に取り込み、セルラーゼという酵素でセルロースを消化します。
また原生動物の細胞内には多数の細菌が共生し、原生動物からエネルギーをもらいながら、空気中の窒素を取り込んでアミノ酸やビタミンを合成します。この結果、シロアリは、セルロース分解物、各種アミノ酸、ビタミンをバランスよく摂取することができます。
蟻道と蟻土
シロアリは比較的弱い昆虫で、湿った環境でないと生きていけません。また、外に出るとアリなど肉食昆虫の餌食になります。
乾燥と外敵を避けるため、シロアリはコロニーから餌場まで、地下10~30cmの深さで蟻道と呼ばれるトンネルを作って移動します。餌場(住宅)に到着すると、基礎や土台の表面に蟻道を伸ばし、食べやすい木材を探して内部に侵入します。
木材などを齧りすぎて穴が開き、光が差し込むような場合、風を嫌うシロアリは、蟻道を修復するのと同じ手段で隙間を塞ぎます。これを蟻土といいます。
蟻道と蟻土は、シロアリの侵入を調べる場合、一番分かりやすい目印となります。
群飛
シロアリのコロニーが大きくなると、新しいコロニーをつくるため、羽アリが飛び出します。これを群飛といいます。関東ではヤマトシロアリの群飛は、ゴールデンウィークごろの暖かい、晴れた日中に始まります。イエシロアリの群飛は初夏の夕方です。イエシロアリの羽アリは、灯りに群がる習性があります。家の近くで羽アリを見たら要注意です。また、玄関や風呂場など屋内で羽アリが飛んだら、その家では間違いなくシロアリの被害が進行中です。アメリカカンザイシロアリの群飛は、6月ごろから10月にかけて続きます。住宅の被害を最小限に抑える上でも、群飛には注意が必要です。